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耐えるチカラ。答えのない問題にどう向き合えばいいのか。

傘をさす人
Photo by Osman Rana on Unsplash

便利な世の中です。
大抵の悩みごとは、スマホの中に解決策を見つけることができます。
しかし、いつもそうとは限りません。
身の回りには、人間関係、家族のこと、進路の問題。
答えのない問題もあふれています。
答えのない問題にぶつかったとき、わたしたちはどうすればよいのでしょうか?

わかろうとする能力

我々の脳は、不安なものや、わからないものを嫌い、わかろうとする性質があるそうです。

確かに、不可思議なものや、理解できないもの、顔は覚えているのに思い出せない人の名前、など、モヤモヤした気持ちは決して気分のいいものではありません。記憶のジグソーパズルがピタッと合った時、なんとも言えない爽快感を覚えます。このような脳の性質が探究心となって、あらゆる学問を発展させてきました。

学問の世界はともかく、我々の回りを見渡すと、答えのない問題は山積しています。身近なところでは、職場の人間関係、育児や介護と仕事の両立、将来への不安、世界に目を向けると、温暖化や紛争、貧困など、どれも容易には解決することはできない問題ばかりです。個人の問題も世界の問題も、極めて深刻な問題でありながら、パズルの一片は見つからず、そもそもパズルの一片があるのかさえわかりません。

学校教育では、誰もが納得する方法で、明確な答えを導き出す能力の獲得が目標とされます。我々は答えを出す訓練を受け、問題に向き合ったときに、何らかの答えを導き出すことには慣れています。そのため、答えのない問題に向き合ったときの対処には不慣れです。

最も簡単で多くの人が経験しているのは、その問題から目を背けること、問題をなかったことにしてしまう方法ではないでしょうか。

負の能力

 ネガティブ・ケイパビリティという言葉があります。「負の能力」または「陰性能力」と訳されます。英国の詩人ジョン・キーツが唱えた概念だそうです。
この言葉は、フェイスブックで紹介されていた書籍で知りました。小説家であり精神科医でもある帚木蓬生(ははきぎ ほうせいの著書にはこうありました。

“私たちは「能力」と言えば、才能や才覚、物事の処理能力を想像します。学校教育や職業教育が不断に追求し、目的としているのもこの能力です。問題が生じれば、的確かつ迅速に対処する能力が養成されます。ネガティブ・ケイパビリティは、その裏返しの能力です。論理を離れた、どうにも決められない、宙ぶらりんの状態を回避せず、耐え抜く能力です。”

帚木蓬生/著 『ネガティブ・ケイパビリティ』朝日新聞出版 2017年 p.9

帚木は、難局に直面するたび、ネガティブ・ケイパビリティという言葉を思い出すことで、逃げ出さず、その場に居続けることができた、命の恩人のようなことばだと語っています。
考え続けることは、苦しいことです。しかし、だからこそ、この苦しさに耐える能力が重要だと帚木は指摘しています。
答えのない問題に「めんどくさい」、「意味不明」というレッテルを貼り、忘却の彼方に追いやる方法もあります。悩んでも仕方がないのだから、それ以上考えることをやめ前に進もう、というポジティブなイメージがあります。しかし、その方法は時として「排除」を意味します。

「わからないこと」を排除、否定、無視する態度は、いじめや、暴力暴言差別偏見の遠因になっていないでしょうか。そうであるならば、ネガティブ・ケイパビリティはこれらの解消にも、重要な役割を果たしてくれそうです。

わからないこと、答えのない問題に向き合うチカラ。
ネガティブ・ケイパビリティ
それは現代社会に最も求められているチカラかもしれません。


<引用文献>
帚木蓬生/著 『ネガティブ・ケイパビリティ』朝日新聞出版 2017年 p.9

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KUA TATSUのアバター KUA TATSU 管理人

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管理人は会社員のかたわら、大学院で主に博物館と障害者の間に存在する社会障壁について研究しました。
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 ○学芸員
 ○ICOM(国際博物館会議)会員
 ○美術による学び研究会(学会)会員
 ○エイブル・アート・ジャパン 会員
 ○京都芸術大学大学院芸術環境研究領域 芸術教育分野修了