芸術大学って、芸術家を目指す人が行くところでしょ?
と思われることが多いようです。
絵画や彫刻などの技法を学ぶことも芸術大学の目標のひとつですが、
芸術大学で学べるのはそれだけではありません。
芸大ってアーティストを目指す人が行くとこだよね?
いやいや、それだけじゃないんです!
広がる芸術の解釈
「芸術」という言葉は、実は非常に古い言葉です。
それは、現代において様々に細分化した技術になる以前、あらゆる技術や技法を含む用語として用いられていました。
美学事典によると、「組み立てる、工夫する」という一般的な意味に加え、ドイツ語のKunstの語源には「困難な課題をたくみに解決しうる、特殊の熟練した技術」という一文を見つけることができます。
産業や科学技術の発展によって、様々な技術が生まれました。「芸術」はそれらを包含する広い意味で捉えられていました。
現代では、芸術の主体となる人や場所、道具、目的、方法、関係性などが、従来の美術品を対象としていた芸術の枠を大きく超越し始めています。
芸術大学で創作以外の何を学ぶのか?
アート×福祉(東京藝術大学 先端藝術表現学科)
学部やコースによって様々な技法や表現方法を学ぶことができます。
日本最初の芸術大学である東京藝術大学美術学部には、
- 絵画科
- 日本画、油絵、版画、壁画、油絵技法・材料
- 彫刻科
- 工芸科
- 工芸、彫金、鍛金、鋳金、漆芸、陶芸、染織、素材造形(木材・ガラス)
- デザイン科
- 建築科
- 先端芸術表現科
- 芸術学科
の7つの学科が開設されています。
このうち、①〜⑤までは作家を目指す人が学びますが、⑥の先端芸術表現科は現学長である日比野克彦さんが教授を務めていた学科です。
この学科は技術や技法ではなく、その名の通り「新たな表現を学び発見する」学科として1999年に新たに開設されました。
数多くのアートプロジェクトの企画や実践を行っていますが、代表的な活動として、単位認定プログラムDOOR(Diversity on the Arts Project)あります。
Diversity on the Arts Project (通称:DOOR)では「アート×福祉」をテーマに「多様な人々が共生できる社会」を支える人材を育成するプロジェクトです。
東京藝術大学 DOOR ウェブサイトより
講師として、現代の社会に生きづらさを感じている当事者、社会と関わりを持ち表現を行うアーティスト、現代の福祉をより広い視点で捉え直す多様な分野の専門家を迎えます。
アートと福祉が滲みあうフィールドをお互いの作用において拡張しながら、体系的かつユニークなカリキュラムを展開していきます。
私たちが暮らす社会は、多様性に満ちています。ひとりひとりの多様な「あり方」の違いを超えて、人と人が丁寧に出会うことで生まれるクリエイティブな視点や振る舞いが、社会に積み重なっていくこと、そして、DOORで学んだひとりひとりが、より多様性のある社会を創出し、また、社会に潜在する共生社会の種を見出していくことを期待しています。
福祉とアート?と思われるかもしれませんが、社会を包み込むチカラあるいは環境という視点で捉えると、とても親和性が高く、福祉業界からも大きな注目を集めている活動です。
また、東京都美術館と共同で運営している「とびらプロジェクト」もこの先端表現学科(というか日比野さんのアイディア💦)から誕生しました。
アート×まち(京都芸術大学 アートプロデュース学科)
京都芸術大学は、通学部の学生が約4,000名、通信教育部の学生が約14,000名、合計約18,000名と学生数で日本最大の芸術大学です。
設立からわずか30年余りと新しい大学ですが、ここまで大きくなった理由は、数字にも現れている通り、日本初の芸術学科通信教育部の発足と、12学科、22コースという専門分野の多さです。
- 美術工芸学科
- 日本画、油絵、写真・映像、染織テキスタイル、総合造形
- 情報デザイン学科
- ビジュアルコミュニケーションデザイン、イラストレーション、クロステックデザイン
- 空間演出デザイン学科
- 空間デザインコース、ファッションデザインコース
- 映画学科
- 映画製作コース、俳優コース
- 文芸表現学科
- キャラクターデザイン学科
- キャラクターデザインコース、マンガコース
- プロダクトデザイン学科
- 環境デザイン学科
- 舞台芸術学科
- 演技・演出コース、舞台デザインコース
- アートプロデュース学科
- 歴史遺産学科
このうち、11のアートプロデュース学科では、”まち”をテーマに京都市内や、青森のねぷたなどをモチーフにした数々のアート作品やプロジェクトを展開しています。
モノづくり以外のコトづくりもアートの重要な役割です。
アート×コミュニティ(東北芸術工科大学 コミュニティデザイン学科)
1992年山形県山形市に設立された比較的新しい大学です。その名の通り、芸術と工科という視点から作家や実践家の育成に取り組んでいます。
- 工芸デザイン学科
- 文化財保存修復学科
- 歴史遺産学科
- 文芸学科
- 美術科
- 日本画、洋画、版画、彫刻、工芸、テキスタイル、総合美術
- プロダクトデザイン学科
- 建築・環境デザイン学科
- グラフィックデザイン学科
- 映像学科
- 企画構想学科
- コミュニティデザイン学科
11の学科の内、他の大学に類を見ない注目される学科はコミュニティデザイン学科です。
コミュニティは自然にできあがるもの、ではありません。何らかの目的や意思をもって、持続的に運営される集団や団体、そも活動を指します。
コミュニティをデザインする、という視点で研究と実践を重ねた第一人者が山崎亮さんです。
東北芸術工科大学では、山崎亮さんを初代学科長に迎え、世界でも類をみないコミュニティデザイン学科を設立しました。(現在の学科長は三代目の壇上さんです)
大学のウェブサイト動画は破滅的にダサいので、山崎さんのYouTubeをご紹介します💦